☆読書感想 雑談力
著 百田直樹 小説家
2016
「永遠の0」や「海賊と呼ばれた男」で有名な元放送作家、現小説家の一冊。
著者はこの本の中で様々なネタ話をしてくれている。
どれも面白い内容なのだが、面白いと感じるのはそうさせる技法を用いているからだと言う。
本のテーマは雑談なわけだが、雑談と言うからには通常、話し方を注意するよう考えがちだ。
しかし、著者は話し手のプロというより書き手のプロである。
世の中全てがそうだとは言えないが、やはり、文章の構成が上手い方は自然と話の構成も上手くなるのだろう。
話の構成で非常に重要なのはオチである。
例えば、ある漁師の話についてこう取り上げている。
著者がテレビ放送作家の時代、漁師にインタビューをした。
初めインタビュー前は、面白いオチの話をしてくれた。
不漁の際、ある海女が、普段よりも深く潜って貝を採ろうとしたとき、他の人の手も偶然、同じ貝を掴み、必死の覚悟で海面に上がるとそのもう一人が海女の娘だった…
しかし、実際の撮影で話をしてもらうとオチの家族だった海女という説明から入ってしまった。
これは話の構成が考えられていなければ、話自体を全てぶち壊しにしてしまうという良い例である。
著者は話の大前提として、起承転結の話をしていた。
これは子供でも知っている言葉である。
それは書き言葉だけではなく、話し言葉に通用する。
また話をするときは人が聞きたい話をするのではなく、自分がしたい話をしろと言っている。
これはよくオタクにありがちなのだが、どこでも聞くようなありふれた話よりも希少性のある、その人しか知らない話の方が盛り上がるということだ。
さらに話をしていると別の考えが浮かぶことがある。思考はさらなる思考を生み出すので、考えが繰り返されるほど、良い考えが固まる。
振り返って自分の話し方を思い出すと、大体話している最中にどうしようか考え出すことが多い。
大抵考えている最中に話が止まってしまうので、場を白けさせてしまうのだ。
必要なのは起承転結の構成である。
これは慣れが必要だ。
一朝一夕で押し寄せる波のような話し方に変わるはずはない。
でも出来る人は羨ましい。
しかし、ただ話をしまくる人間は社会に取って害悪である。
それは、誰も聞く気にならないし、単なる自己満足だ。
これは著者も述べている。
話したいことは構成を考え、テーマをブレさせないことも重要な点である。
忘れてはならない。
かくいう私も全くもって話ができないとか訳ではない。
退職する前、会社の朝礼で会社の方針、今の自分の部署の方針について、問題提起した。
その際はなぜそのような状況に至り、その発言をするのか、どのように伝えるかを前々からよく考えていた。
結果、話はよく伝わり、上司達を動かすことができた。
あれは準備と会社に対する怒りというかダメだという強い意志があったから、みんなに届いたのだろう。
あのような感覚を忘れずに発言をしていこう。
てか、早く転職しよう。