☆読書感想 10戦9勝の数字の使い方

著  深沢真太郎  教育コンサルタント

2016

 

題名から見ると数字に関する図書であることはわかるが、実際には論理思考に関する能力について説いた一冊であった。

 

ビジネスにおいて、論理思考とは非常に重要なスキルである。

これは相手に対する説明の納得をさせるスキルである。

 

我々は普段の会話の中で、話がわかりやすいという人とわかりにくい人がいることを感覚的に理解している。

これは相手の発言の論理性に従っている。

 

「aならばb、bならばcのとき、aはcである」という三段論法が有名であるが、人は誰かの話を聞くときに無意識にその論理性を確認しているのである。

論理が破綻しているとき、その話は相手にとって拒否の対象となる。

 

つまり、うまい営業とは声の大小や容姿はともかく論理的であると言える。

それだけ説得力がある話ができるのである。

 

 

では論理性を鍛えるためにはどうすれば良いか?

 

これは日頃から論理だった考えを持つことにある。

つまり、誰かに説明するときにはこうであるからこう、またこうであるからこうと一つ一つの発言を一本の線で結ぶことにある。

余り難しく考える必要はない。

 

重要なのは自分の話したい結論を用意することとそれに向けて進むべき道しるべを用意することだ。

そこで、キーワードを準備する。

 

例えば、マックのハンバーガーはうまいが体に悪いと話したいとする。

結論は先に出しても最後に出してもいい。

重要なのは、ハンバーガーは糖分が多いこと、体に悪い理由として糖分が本来は摂取を必要としない成分であること、そしてうまい理由は糖分が快楽を感じさせるドーパミンを出すことである。

 

キーワードは

ハンバーガー→糖分→ドーパミン

ハンバーガー→糖分→摂取不要

 

この流れでさらにドーパミンとは?とか摂取不要の理由は?といった説明をしていければ、論理は破綻することなく、その説得力は増していく。

 

 

ところで、この本ではビジネスにおいて必要な計算は四則演算で済むと書いている。

そして必要なのは実数と割合を測ることであり、割合とは質を意味することと説明している。

 

加算減算乗算は規模を把握するための計算で、除算は質を把握するためにあると考えよう。

 

よくあるのが、与えられた数値を掛けたり割ったりして、何らかの意味を持つ値を作り出そうとすることだ。

例えば、この本では商品の売り上げと売り上げ販売員数と売り場面積という情報があるとする。

このとき売り上げと人数は割ってあげれば、売り上げ/員数となる。

また、面積では売り上げ/面積となる。

しかし、売り上げ/員数/面積などと計算してしまうことがよくある。

これは面積の計算が売り上げに乗算されていて、もはやなにを示す値なのかわからない。

 

データの使用には注意しよう。

 

☆読書感想 戦略の本質

著  野中郁次郎 他5名   戦史研究家

2008

 

失敗の本質の姉妹編。

こちらは国内の作戦はなく、海外メイン。

逆転や目的が果たせなかった戦争を扱っていた。

 

それは

毛沢東 紅軍 反国民党戦線

朝鮮戦争

・バトルオブブリテン

スターリングラードの戦い

第4次中東戦争

ベトナム戦争

の6つである。

 

この本は勝者側だけを捉えているのではなく、スターリングラードベトナム戦争などは敗者側を基準としているので、視点としてどちらかに偏っているわけではない。

 

ただ、印象として残るのはやはり、勝利を収めた側であろう。

 

毛沢東はこの作戦の段階では非常に卓越したリーダーシップを発揮していたが、後に希代の蛮行として名高い文化大革命を実施しているので、余り良いイメージは湧かない。

なのでイギリス側が耐え忍び勝利したバトルオブブリテンと同じくエジプト側が耐え忍び勝利した第4次中東戦争が印象強い。

 

これらの作戦の勝利は限定状況下での目的遂行を極限まで引き上げ、用意周到な環境を構築したことにある。

 

バトルオブブリテンではドイツの航空爆撃部隊に対し、レーダーの開発に注力したこと、あるいは航空戦力を格闘戦に長けたものに仕上げたことで、本土堅守の陣形ができていた。

ドイツとの距離が短く、一度攻撃機が来てしまえば、あっという間に陥落すると思われるような状況下でも防御力を最大限に生かす滑走路や空軍部隊の配置を怠らなかった。

 

第4次中東戦争ではイスラエルの強力な航空戦略に対し、なすすべもない状況であったが、経済的緊迫からスエズ運河を確保するという限定目標を据えることで作戦の根幹を強靭に仕立てた。

歩兵であっても、対空対地武器を持ってすれば、戦闘機や戦車に対し、十分に戦えることを証明した。

 

まるで信長が長篠の戦いにて使用した足軽鉄砲隊のように相手に有力な戦力が存在しても、勝ち得るチャンスはあるということだ。

ただし、これは相手の戦力を事前に知っていて、その対処に時間があるときにのみ生まれるチャンスである。

 

ベトナム戦争のように世界を牛耳ってきたアメリカが相手を軽く見て、相手のやり方のゲリラ戦の研究ができていなかったように、戦争の重点は相手を知ることにある。

 

これは戦争に限ったことではなく、日頃の生活の面でも重要なことだろう。

企業同士の戦いや恋愛、スポーツなども駆け引きで、これが重要であるのは変わりない。

 

日本人は盲目的にあるいは精神論的に物事に取り組む節がある。

これは先の戦争でも現れたことだが、結果的に敗北につながった。

 

日本がこれからもあらゆる戦闘で勝利するためにまず相手を知り、そして自分たちの目的を明確にしよう。

この国は世界の中で最も長い歴史を持つ国である。

私たちにはそれができる。

 

☆読書感想 闇ウェブ

著  セキュリティ集団スプラウト(株式会社スプラウト)

2016

 

タイトルはヤミではなく、ダークと呼ぶ。

所謂ダークウェブに関しての一大事件や現状を綴った一冊。

 

この本を読んで私は初めて、ダークウェブで闇サイトを起こし、終身刑を受けた人間がいることを知った。

 

それはシルクロードというサイトを起こしたウルブリヒトという人間だ。

彼はこのサイトを運営した2年半で、約120億もの金額を手にしていた。

年齢も捕まった当時、29歳である。

 

シルクロードで取引されていたのは主にドラッグで、違法銃器や偽造パスポート、偽札、中には殺人代行サービスまであったようだ。

 

取引に使用されていたのは、ビットコインのみである。

 

ここで、私はいかにビットコインが汚い通貨であるのかをようやく理解できた。

前にビットコインマネーロンダリングに使われているとした文章を読んだことがあったが、軽く読んでいた。

ビットコインはその技術自体は匿名性と簡易性を持つ優れた存在であるが、実際の運用に問題を持っていると初めて認識した。

 

ともかく、悪の大首領DPRと呼ばれた彼は実際には好青年にも見える恐ろしい実態がすでに引き起こされていた。

 

 

ダークウェブとはサーフィスウェブと対象にあり、要は検索エンジンに引っ掛からないサイト群のことである。

これは、つまり氷山の一角に例えられ、氷山がウェブ全体を指すとき、サーフィスウェブは海面に出ている部分、ダークウェブは海面よりも下の部分である。

ダークウェブの方が、圧倒的に多い。

 

しかし、検索エンジンで引っ掛からないのであれば、いかにして、これらを利用するのであろうか。

これにはTorと呼ばれるツールが使われている。

TORはトーアと呼び、元はthe onion rouiterと呼ばれる技術で、pcが目的のサーバーにたどり着く際、その間の通信区間を何重にも暗号化することである。

実際にはネットワークの入り口と出口の間に3つ以上のpcルーターが存在し、それぞれのデータの暗号鍵は渡し元と渡し先の区間でしか知ることができない。

しかも、その経路は時間と共にランダムに変更されてしまう。

つまり、ほぼ完全なる匿名性を持っているということになる。

 

実際シルクロードもこのTorを利用したシステムであり、ウルブリヒトが捕まった原因もTor自体の欠陥というより、FBIの強力な捜査と個人的ミスによることが原因らしい。

 

したがって、この技術は今のところ警察や国家的組織から隠れで取引する凶悪なツールであることに変わりない。

しかし、やはりボロは出るし、ウェブ上の完璧な犯罪というのはそう生まれないということである。

 

 

Tor自体も本来は国内ネット監視を行う国で政治活動を行うためのツールであったわけで、優れたツールは天使でもあり悪魔でもある。

天使👼 or悪魔👿

 

使う側の人間はツールの使い方に十二分に注意を払い、使っていくことが必要である。

 

(ちなみにTor等は決して使用しないよう注意しよう。ツールの作成元がスパムやウイルスを仕込んで、情報を抜き取る可能性が高い。

Torを使うということはドラッグに手を出すことと同義だと考えよう。)

 

☆読書感想 ユーチューバーが消滅する未来

著  岡田斗司夫  社会評論家

2018

 

著者はアニメ制作会社ガイナックス創業家

コンテンツ周辺における未来予測や現状議論を行なった一冊。

 

題名からするとYOUTUBER批判の作品に見えるが、実際は的確にいろんな事項を考察している。

まず、この本における予測の重要項目はAIの台頭だ。

 

2019年現在、ユーチューバーとは国内の人気少数グループ側を示す言葉として、主に使用されている。

しかし、この本によると数年か十数年で、これが変わってくると言う。

それは海外との本質的グローバリゼーションである。

 

今でさえ、自動翻訳技術というのは日常的に使えるレベルとは呼べないが、昔に比べると驚異的な次元まで技術が発達している。

これが、上記の年数を経るともはや日常レベルに達し、海外と国内の言語摩擦がなくなると言っている。

すなわちその時には大量の海外コンデンサの波がやってくることになり、ユーチューバーとはその世界的アーティストを指す言語に変遷するということだ。

 

ニッチなジャンルでは、国内コンテンツも人気のアーティストが生まれるだろうが、海外コンテンツに比べ、量、質共に劣っていることは人口基準で容易に想像できる。

 

さらに、これらコンテンツは次第に人間を不要とし、AIの自動配信チャンネルが、主流となると著者は考えている。

確かに顔も形も自由な造形の存在が、編集や配信に関する手間を排除し、延々と定期配信し続けるチャンネルがあれば、そちらに人気が出る可能性は十分に考えられる。

 

特にVtuberと呼ばれる仮想キャラクターによる配信がブームとなった昨年を考えると人間の配信である必要性は完全になくなる感覚も共感できる。

 

そのときには芸能人が不要となるだろう。

 

 

そして、これは未来予測ではなく現状把握だが、現代を「現実を盛る社会である」と示唆している。

 

FacebookTwitterといったSNSアメリカ大統領さえも発言の場として、利用している。

しかし、それら滝のような情報の発信に対し、一つ一つの情報が正しいかどうかはほとんどの人間が考えていない状況にある。

これはその情報が正しいかどうかよりむしろ、インパクトがあるかどうかに主観が置かれているように変化したからだと著者は述べる。

 

なるほど確かに政治における情報戦においても、政党を優位にするために他の政党を貶めるような情報がよく発信されるわけだが、情報の発信に対する信憑性が無くても人々の印象は変化してしまう。

 

人は何の変哲も無い情報よりも心踊る、いや揺さぶられる情報を常にチェックしている。

 

このような時代では、自分たちも自分を盛る環境に身を置かざるを得ない。

つまり、心象戦略が細部よりも重要な時代となったということである。

 

私たちのような一般の人間であっても、この波は受け入れなければならない。

そのような思考性を皆が持つ以上、逃げ場はない。

 

さあ、自分を飾ろう。

 

 

 

☆読書感想 結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?

著  板越ジョージ  NY起業家

2013

 

日本のコンテンツ産業の人気や収支に関する状況を記した一冊。

 

著者は長年にわたり、日本のアニメやビデオをアメリカにて販売する企業を営んできた方で、日本の版権ビジネスについて、鋭い視点を持っていた。

ビジネスを展開する人間だけあって、日本人の弱さをよく知っている。

 

日本人は多岐にわたるアニメ、マンガを生み出してきたわけだが、海外において、強烈な人気を誇っているのかというとそうでもないらしい。

クールジャパンと称して、海外ではアニメマンガEXPOが開かれていることは日本のマスコミもよく紹介しているが、実際に収益に結びつくような大盛況とは程遠い状況にある。

 

例えば、アニメなどはテレビで放映される場合、テレビ局のスポンサー収益だけでは全くの赤字であって、これをカバーするのはグッズやDVD等の二次的著作物に依存している。

これは国内における需要に対しては作品を提供できていると呼べるが、需要自体を作り出す必要のある海外に対しては効果がない。

 

また、マンガも含め、海外では作品の放映や発売と同時に、非公式の集団が勝手に翻訳し、海賊版としてインターネット上にアップロードされている。

 

これでは全く収益を生み出す産業として成り立たないのである。

しかし、日本も全く手を挙げないというわけではない。

先の2018年には巨大海賊版マンガ提供サイトの漫画村に対する違法性を主張し、これを閉鎖することができた。

また、勝手な翻訳を行う集団に対しては、これをあえて、公式化する措置をとることで、収益化につなげたという話もあるらしい。

 

著作権は国際的に見て、日本はその法整備に非常に遅れをとっている懸念がある。

日本人はいいものを作れば、自然と売れるだろうという物質主義的思想が古くからある。

しかし、現代における著作物とはデジタル化されており、容易にそのコピーが可能となっている。

著作権はそのコピーの抑止力として唯一有効な手立てであって、これを軽視するとせっかくの優秀な産業が継続できないのである。

 

一方、著作権の有効な活用を行う国は正しくアメリカである。

アメリカンコミックは映画でも人気であり、その道具として、強力なツールとなっている。

これはコミックとしての収益より、映画の収益の方が、何重にもなることを彼らが知っているからであり、その著作権は一つの会社に一元化されている。

日本の場合、著作権は漫画家、アニメ制作会社、放映局など分割され、複雑になっている。

このため、作品一つ作り上げる場合も、あらゆる許可が必要になり、優れた作品に繋がらない。

国としてのコンテンツ提供戦略が彼らにはあるのだ。

 

日本にはこのような事業のコングロマリット化が出来ないという弱点がある。

技術の規格などでもよく各社バラバラで、なかなか一本化されない内に海外にしてやられることが多様にあるわけで、コンテンツ産業も同じということだ。

 

日本は本当の意味で一致団結する時期にあるのかもしれない。

☆読書感想 リアル人生ゲーム完全攻略本

著  架神恭介 他一名  作家

2017

 

登場人物を神に見立て、この世界に対する考え方を皮肉的に捉え、綴った一冊。

なかなか面白い解釈の本だった。

 

総じて言えば、人生とは正しくクソゲーということである。間違いなく。

 

まず、人生における目的とはなんなのか?

人が誰しも考える謎であるが、明確な答えはない。

結果的には、主観的考えを持つことでしか答えられないわけだが、この本では幸福点を最大化することにあると言っている。

要はハッピースコアアタックだ。

 

つまり、幸福になればなるほど人生における勝者だということだ。

ただし、幸福という概念は人により異なる。

金、愛、美貌、コレクション。

遺伝であるとか環境といった、まさにランダム要素が大きく影響するわけだ。

こんなものはクソゲー以外になんと呼べばいいのだろう。

 

まあ、要はこの世界は世界を作った神さま(本では銀河を作りし神が上司、人類を作りし神=イエスが部下かつ主人公としている)の気まぐれでしかないということだ。

 

では私にとっての幸福点基準を書いてみよう。

・金  倍率0.5

・食  倍率1.0

・睡眠  倍率1.5

・アニメ  倍率1.0

・読書  倍率0.7

・特撮  倍率0.8

・ゲーム  倍率0.9

・エロ  倍率1.0

 

これはひどい。 

基準がエンタメに偏っている。

ここに加えたいのは運動だ。

やはり運動を継続しないと身体は死に近づくだけだ。

 

そして、この本では人生における重要局面は死に際であるとしている。

つまり、終わり良ければすべて良しな訳だが、

死に際に幸福を感じられない状態は苦しいものだという。

大抵の人間は残りの人生が少なくなると活動量が低下し、思うようなことができなくなる。

そのような状況で、ただ何気なく時間を浪費するというのは虚無感を感じさせるものだろう。

そういう観点からも健康を維持することは若い時から意識すべきことだ。

 

 

また、本の後半では攻略本と称して、これからの人生を歩む者へアドバイスを挙げている。

 

そこで注目すべき点は災害や経済ショックの周期性である。

例えば、日本では頻繁に災害(特に地震は世界に類を見ないレベルで発生する)は平時生活している人間でも意識することが多い。

ほぼ10年に一度というレベルで巨大地震に見舞われている。

しかも、災害に巻き込まれたものは絶望的被害を受けることがあり、これに対する完璧な備えは存在しない感じもする。

 

これも人生をゲームに例えるなら、たった一度で財産を失うのだから、クソゲーという評価の元となるわけだ。

しかし、単に地震による影響においても、損をする一方、利益を得る人間もいるのだ。

これは防災関連企業であるとか、保険屋といった類であろう。

つまりは、どの選択をするかは自己責任であるので、後悔はしないようにすべきということである。

 

私の人生は2070年ごろまでであろう。

そこにはどんな世界が待っているのだろうか。

中国は今の勢いを失い、インドやアフリカが、先進国の仲間入りをしているのだろうか。

そのときまでに戦争は起こらずに平時が続いているのだろうか。

 

そうそう想像がつかないが、想像する価値はある。

明確なビジョンを創造し、この世界をハッピーエンドでクリアしてやる。