☆読書感想 戦略の本質
2008
失敗の本質の姉妹編。
こちらは国内の作戦はなく、海外メイン。
逆転や目的が果たせなかった戦争を扱っていた。
それは
・毛沢東 紅軍 反国民党戦線
・朝鮮戦争
・バトルオブブリテン
・スターリングラードの戦い
の6つである。
この本は勝者側だけを捉えているのではなく、スターリングラードやベトナム戦争などは敗者側を基準としているので、視点としてどちらかに偏っているわけではない。
ただ、印象として残るのはやはり、勝利を収めた側であろう。
毛沢東はこの作戦の段階では非常に卓越したリーダーシップを発揮していたが、後に希代の蛮行として名高い文化大革命を実施しているので、余り良いイメージは湧かない。
なのでイギリス側が耐え忍び勝利したバトルオブブリテンと同じくエジプト側が耐え忍び勝利した第4次中東戦争が印象強い。
これらの作戦の勝利は限定状況下での目的遂行を極限まで引き上げ、用意周到な環境を構築したことにある。
バトルオブブリテンではドイツの航空爆撃部隊に対し、レーダーの開発に注力したこと、あるいは航空戦力を格闘戦に長けたものに仕上げたことで、本土堅守の陣形ができていた。
ドイツとの距離が短く、一度攻撃機が来てしまえば、あっという間に陥落すると思われるような状況下でも防御力を最大限に生かす滑走路や空軍部隊の配置を怠らなかった。
第4次中東戦争ではイスラエルの強力な航空戦略に対し、なすすべもない状況であったが、経済的緊迫からスエズ運河を確保するという限定目標を据えることで作戦の根幹を強靭に仕立てた。
歩兵であっても、対空対地武器を持ってすれば、戦闘機や戦車に対し、十分に戦えることを証明した。
まるで信長が長篠の戦いにて使用した足軽鉄砲隊のように相手に有力な戦力が存在しても、勝ち得るチャンスはあるということだ。
ただし、これは相手の戦力を事前に知っていて、その対処に時間があるときにのみ生まれるチャンスである。
ベトナム戦争のように世界を牛耳ってきたアメリカが相手を軽く見て、相手のやり方のゲリラ戦の研究ができていなかったように、戦争の重点は相手を知ることにある。
これは戦争に限ったことではなく、日頃の生活の面でも重要なことだろう。
企業同士の戦いや恋愛、スポーツなども駆け引きで、これが重要であるのは変わりない。
日本人は盲目的にあるいは精神論的に物事に取り組む節がある。
これは先の戦争でも現れたことだが、結果的に敗北につながった。
日本がこれからもあらゆる戦闘で勝利するためにまず相手を知り、そして自分たちの目的を明確にしよう。
この国は世界の中で最も長い歴史を持つ国である。
私たちにはそれができる。