☆読書感想 チャイナ・イノベーション

著  李智慧 LI ZHIHUI  野村総研 コンサルタント

2018

 

中国の主要企業の変遷と歴史、そして中国当局の目論見に対し、翻って日本の状況を辛辣に示している。

 

この本を読むまで、自分の中では、例えばファーウェイやシャオミ、OPPOといったスマホ生産企業が中国の主要企業だと思っていた。

なんとも恥ずかしい。

 

本当の中国の主要企業とは、アリババ (アント・フィナンシャル)とテンセントだ。

アリババはEC・クラウド・銀行の機能を提供する中国最強の企業だ。

テンセントはコミュニケーションツールを代々提供してきたアリババに並び立つ企業だ。

アリババ=銀行兼アマゾン

テンセント=銀行兼フェイスブック

と考えるといいだろう。

 

その下にいるのが先に挙げたスマホ企業、さらドローン生産会社のDJI、中国のUberと言えるDiDiだ。

その他強力なスタートアップ企業が並び立つ。

 

アリババ、テンセントの眼を見張る成長はどこからきたか。

それは決済手段としてQRコードを利用した簡易決済を広めたことだ。

中国の国民は全員がクレジットカードの保有率がそれほど高くなく、また持っていたとしても決済の成功率は高くなかった。

 

これが主要2大企業を成長させることになった。決済のデータをすべて記録することができたからだ。

銀行を介さずに取引を行えるようになり、データという資産を増やすことができた。

(後日、銀行側は銀聯カードというものを発行し、銀行も顧客の決済データを得ることができるようになった)

人口が日本の10倍以上あるこの国では取引が尋常ではない量で行われる。

これにより、企業は莫大な利益を短期間で得られるようになり、その成長スピードは誰も経験したことのないものとなった。

中国に対抗できるのはアメリカの一部の企業のみだろう。

市場規模、データ量、人件費、どれを取っても対抗できる手段がない。

政府によるサポートでさえ、他国からしたら考えられない規模なのだ。

 

日本からたった3時間で行ける隣国が、たった20年で世界を制してしまったのだ。

 

日本が今後、世界で戦うにはやはり人材が重要になる。

特許申請数は先進国の中でも少ない方で、海外留学率も非常に低い。

 

どう足掻いても、海外に目を向け、新しい販路を拡大しないと消えていく一方だ。

 

戦わなければ生き残れない。