☆読書感想 結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?

著  板越ジョージ  NY起業家

2013

 

日本のコンテンツ産業の人気や収支に関する状況を記した一冊。

 

著者は長年にわたり、日本のアニメやビデオをアメリカにて販売する企業を営んできた方で、日本の版権ビジネスについて、鋭い視点を持っていた。

ビジネスを展開する人間だけあって、日本人の弱さをよく知っている。

 

日本人は多岐にわたるアニメ、マンガを生み出してきたわけだが、海外において、強烈な人気を誇っているのかというとそうでもないらしい。

クールジャパンと称して、海外ではアニメマンガEXPOが開かれていることは日本のマスコミもよく紹介しているが、実際に収益に結びつくような大盛況とは程遠い状況にある。

 

例えば、アニメなどはテレビで放映される場合、テレビ局のスポンサー収益だけでは全くの赤字であって、これをカバーするのはグッズやDVD等の二次的著作物に依存している。

これは国内における需要に対しては作品を提供できていると呼べるが、需要自体を作り出す必要のある海外に対しては効果がない。

 

また、マンガも含め、海外では作品の放映や発売と同時に、非公式の集団が勝手に翻訳し、海賊版としてインターネット上にアップロードされている。

 

これでは全く収益を生み出す産業として成り立たないのである。

しかし、日本も全く手を挙げないというわけではない。

先の2018年には巨大海賊版マンガ提供サイトの漫画村に対する違法性を主張し、これを閉鎖することができた。

また、勝手な翻訳を行う集団に対しては、これをあえて、公式化する措置をとることで、収益化につなげたという話もあるらしい。

 

著作権は国際的に見て、日本はその法整備に非常に遅れをとっている懸念がある。

日本人はいいものを作れば、自然と売れるだろうという物質主義的思想が古くからある。

しかし、現代における著作物とはデジタル化されており、容易にそのコピーが可能となっている。

著作権はそのコピーの抑止力として唯一有効な手立てであって、これを軽視するとせっかくの優秀な産業が継続できないのである。

 

一方、著作権の有効な活用を行う国は正しくアメリカである。

アメリカンコミックは映画でも人気であり、その道具として、強力なツールとなっている。

これはコミックとしての収益より、映画の収益の方が、何重にもなることを彼らが知っているからであり、その著作権は一つの会社に一元化されている。

日本の場合、著作権は漫画家、アニメ制作会社、放映局など分割され、複雑になっている。

このため、作品一つ作り上げる場合も、あらゆる許可が必要になり、優れた作品に繋がらない。

国としてのコンテンツ提供戦略が彼らにはあるのだ。

 

日本にはこのような事業のコングロマリット化が出来ないという弱点がある。

技術の規格などでもよく各社バラバラで、なかなか一本化されない内に海外にしてやられることが多様にあるわけで、コンテンツ産業も同じということだ。

 

日本は本当の意味で一致団結する時期にあるのかもしれない。